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概要:10月31日投開票の衆議院選挙の争点の一つは、「分配と成長の好循環」論議であった。与党自民党は、「成長なければ分配なし」と主張し、野党立憲民主党は、「分配なければ成長なし」と反論した。株式市場の最大関
10月31日投開票の衆議院選挙の争点の一つは、「分配と成長の好循環」論議であった。与党自民党は、「成長なければ分配なし」と主張し、野党立憲民主党は、「分配なければ成長なし」と反論した。株式市場の最大関心事の金融所得への課税強化については、岸田文雄首相が、総裁選挙の公約としていたが、「岸田ショック」に接して早々に引っ込めた。対して立憲民主党では、一部幹部がNISA(少額投資非課税制度)に課税すると勇み足発言をし、釈明に追われる一幕もあった。選挙結果は、自民党が、公示前より議席数を減らしたものの、単独で絶対安定多数の議席を獲得し、大手メディア各社の事前の劣勢観測報道をひっくり返した。
この「分配と成長」論議は、やや形を変えて前週末の5日の株式市場でも、「分配と株価の循環」として市場参加者に意識されたフシがある。折からの決算発表に際して、業績を上方修正し増配に踏み切り、株主への「分配」を積極化した銘柄が相次いだが、これを株高材料とするか株安材料とするか銘柄個々で分かれたからだ。「分配と株高の好循環」なのか「分配と株安の悪循環」なのか判断を難しくさせた。
「分配と株安の悪循環」の典型は、11月4日前引け後に今3月期業績の3回目の業績上方修正と増配、復配を発表した日本郵船<9101>(東1)と川崎汽船<9107>(東1)であった。すでに10月29日に商船三井<9104>(東1)が、同様に業績の再々上方修正と再増配を発表し3社揃って大幅高していただけに、材料出尽くし感に加えて、増配幅が保守的過ぎるなどとして売り評価され続落した。しかも、続落した3社の株価は、PERが1倍~2倍、配当利回りは6%~11%と売られ過ぎを示唆しているのにである。
古来、海運株のビジネスモデルは、海運市況が、世界の海を舞台に周期的に10年に一度高騰する際に荒稼ぎし、残りの9年間はその溜め込んだ稼ぎで食いつなぐ極端な市況産業型ともいわれてきた。今回も、世界的なコンテナ船の荷動き活発化、コンテナ不足に起因するコンテナ船運賃の高騰が、業績の再々上方修正、大幅増配につながった。この環境好転は、昨年8月以来、1年3カ月もの長期に及び、業績が好調でキャッシュが積み上がっている間に大幅増配をして株主還元の大盤振舞をする企業のセンチメントやモチベーションが働いたかもしれない。だからといって来2023年3月期も、この業績推移が続くとは誰も保証してくれないとのマーケットの冷めた見方も、株価にカゲを落とした。
それにしても、今年10月中旬からスタートした今回の決算発表では、業績を上方修正する銘柄が目立ち、業績修正と合わせて増配を打ち出す銘柄も少なくない。とくに自民党の総裁選挙や総選挙と同時進行的に、総選挙の争点の「分配と成長の好循環」論議が盛り上がったのと合わせるかのようにラッシュとなった感が強い。これまでのキャッシュを溜め込み内部留保優先でリスクを取らないいわゆる日本型経営から脱して稼いだキャッシュをそのままそっくり株主に還元するパラダイムシフト(規範の変遷)を連想させ、来年4月の東証の市場区分再編とともに導入されるコーポレート・ガバナンス・コード(企業統治原則)の先取りも窺わせる。自民党が、来年度税制で賃上げを行った企業への優遇税制導入を検討していると伝わったことなども後押しになったかもしれない。
ということで今週の特集では、主要3株価指標が最高値を更新している前週末5日の米国市場で、景気敏感株優位の展開が続いていることも勘案し、業績上方修正と増配を発表した銘柄から「分配と株高の好循環」が進行することを想定して関連銘柄をセレクトをしてみたい。海運大手3社ほどではないが、PER評価が1ケタ台、配当利回りが4%~5%となる銘柄が中心で、なかにはPBRが1倍を割るバリュー株のクラスターも目立つ。配当取り妙味のインカムゲインとともに、値幅稼ぎのキャピタルゲインも期待したい。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)
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